日本の象牙取引の全面禁止にご理解とご協力をお願いします

Shut down the ivory trade in Japan

Humane Society International

HSI(ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル)は、研究室の動物、農場の動物、野生動物など、すべての動物を救うために活動する世界的な動物保護団体の一つです。

年間2万頭以上ものゾウが密猟で殺され、日本は闇市場への大きな供給源に

象牙は日本で江戸時代には富裕層の装飾品、明治時代には輸出用の工芸品や邦楽器部品や様々な日用品、そして高度成長期以降はハンコの高級素材のひとつとして大量に利用されてきました。しかし消費者が目にするのはいつも、美しく加工された象牙製品であり、材料として使われる象牙の多くがいかに残酷な方法でゾウから採取されているか、その実態を知る人は多くありません。 それは、今も日本国内で合法的に流通する象牙の約80%が「象牙のハンコ」に加工され、多くの消費者に珍重されていることからも想像がつきます。

近年、国内で新しく作られる「象牙のハンコ」の多くは、象牙の国際取引禁止の前に、または過去に2度行われた、いわゆる「ワンオフ・セール」によって限定的に輸入された“密猟によらない象牙”の在庫でまかなわれているとみられますが、密猟者たちがお金のために年間2万頭以上ものゾウを殺していると知っていれば、「象牙製品がほしい」と考える人はもっと少なくなるはずです。そしてそもそも象牙製品の需要がなくなれば、ゾウを密猟したり象牙を違法に取引する理由すらなくなるのです。

2018年、中国国内における象牙取引が全面的に禁止へ

また現在、中国には世界最大の象牙の闇市場があるとされていますが、2018年からは中国国内における象牙取引が全面的に禁止され、すでに正規のルートで商品を扱う宝飾店やインターネット通販では象牙を購入することができなくなっています。しかし日本では依然として合法的な象牙の売買が広く認めらていることから、「違法な手段で国内に入った象牙が紛れ込んでも区別できない状態」が生まれ、中国の闇市場への大きな供給源になっていると言われています。

さらには「日本からの象牙の密輸が、中国以外の象牙の闇市場を活性化している」と指摘する国際世論も高まっています。

ゾウ

このすばらしい生きものを救うために私の声を提供したい

野球選手であり動物を愛する陽岱鋼選手は、ゾウの密猟と象牙の密輸の蔓延からゾウを保護するよう求める世界的な動物保護団体、ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(Humane Society International、HSI)の活動に賛同しています。陽選手は、最も歴史のあるプロ野球チームである読売巨人軍の外野手で、HSIの新しい日本語の動画キャンペーンで主役を務め、ゾウのために意見を述べるHSIにとっての日本初のセレブです。

なお、この動画は日本では2018年3月8日からHSIのホームページで公開となりました。また、陽が主役を務める標準中国語の同ビデオが台湾でも2018年3月8日から公開されています。
陽選手は次のように述べています。

ゾウは、サバンナとアフリカ・アジアの森の優しい巨人です。

それでも毎年、何万ものゾウが密猟者に殺され、象牙は不法に取引されています。

私の幼い娘が大人になる頃には、野生のゾウはもはや存在しないかもしれないということを知り、
とても悲しい気持ちになりました。

私は、謙虚にこのすばらしい生きものを救うために私の声を提供したいという気持ちになりました。

2007年〜2014年

殺されたゾウの数

144,000頭
殺されたゾウの数

アフリカのサバンナの
ゾウの個体数

-30%
アフリカのサバンナのゾウの個体数
2011年〜2016年

日本からの象牙密輸出量

2.42トン
日本からの象牙密輸出量

日本から中国へ象牙への
違法輸出事例件数

100件以上
日本から中国へ象牙への違法輸出事例件数
  • ※1 「Great Elephant Census(大規模ゾウ生息数調査)」より
  • ※2 「IVORY TOWERS 日本の象牙の取引と国内市場の評価」より

日本が国内取引を停止すれば、世界中の象牙の密猟や違法取引を減らせる

世界を見回すと、密猟や違法取引は重大な国際犯罪として認識され、中国以外にもアメリカ、香港、台湾、イギリスなどで象牙の国内市場を閉鎖する動きが加速しています。しかし2018年現在、「ワシントン条約」(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)で閉鎖が勧告されているにもかかわらず、日本は「引き続き、象牙の国内市場を維持する」との立場をとっています。その理由として政府は「近年、日本国内で大きな密輸や違法取引が確認されていないこと」や「『種の保存法』(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)の改正により、象牙の流通管理が順次強化されること」などを挙げています。

しかし違法輸出に関しては、財務省が国会で「どれだけの違法輸出がされたかは把握していない」と答弁しているように(※1)、全容がまったく解明されていません。また改正された「種の保存法」だけでは個人が所有する象牙の総量すら把握できず、それが中国の闇市場への組織的な違法輸出や世界的な密猟を誘発しかねません。

サバンナでは約30%のゾウの個体が殺されている

事実、象牙の国際違法取引のデータを収集・分析する「ゾウ取引情報システム」(ETIS)によると、2011年~2016年に日本から海外へ違法に輸出された象牙は2.42トン(押収された分のみ)におよび、その95%が中国に密輸されていたことが分かっています。

2016年に行われた「大規模ゾウ生息数調査」(Great Elephant Census)によると、2007年から2014年の間に密猟者たちに殺されたゾウは144,000頭で、この期間にアフリカのサバンナでは約30%のゾウが命を落としました。

これ以上、世界中の罪のないゾウたちを密猟の犠牲にしないためにも、日本はまず密輸の温床となっている国内市場を閉鎖しなければなりません。そして日本国内における象牙の在庫管理を徹底した上で、違法な輸出入を許さない強固な監視体制を敷くことが急務なのです。

(※1)第193回国会参議院環境委員会会議録第15号7~8頁(2017年5月25日)

ゾウ

個人間の取引は法規制が追い付かず、インターネット上では「隠れビジネス」も横行

日本では、「種の保存法」により象牙を扱う事業者は登録が義務付けられ、未加工で象牙そのものの形を保った「全形象牙」の取引にも一定の規制が設けられています。
しかし個人間における象牙製品の譲渡や売買については現状、何もルールが設けられていません。そのため近年、インターネットオークションやECモール、個人向けフリマサイトなどを利用した個人間の象牙取引が急増しており、個人を装って象牙を売りさばく悪質な業者もいることが分かっています。
海外の象牙製品を個人が持ち込むことを防ぎきれず、国内での個人間の取引を把握できない今の日本の法律には、“大きな抜け穴”があると言わざるを得ないでしょう。そんな法規制が追い付いていない中、楽天市場、イオン、メルカリなどの日本大手の通販会社は自主的に象牙製品の取り扱いを中止することを決定しており、今後ほかのサイトも追随することが予測されています。

日本はかつて世界最大の象牙消費国だったことから、過去に合法的に国内で作られたり輸入されたりした象牙製品が今も数多く存在しています。そのためインターネット上で取引される象牙製品がすべて違法なものというわけではありませんが、やはり中には密輸や違法な取引による象牙も……。このようなインターネットを介した野生生物の違法取引は「野生生物のサイバー犯罪」(wildlife crime)と呼ばれ、国際的に重要な課題となっています。

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取引に関するFAQ

  • アフリカで密猟が多く起きているのはなぜですか?

    「買う人がいるから」です。密猟者も「生活者」の面を持っており、ゾウを殺して牙を売る行為は「手っ取り早く、かつ数少ない金儲けの手段」でもあるのです。残念ですが、現地では警察や軍隊も、しばしば賄賂をもらって密猟を見逃しているのが実情です。

  • 日本での象牙の国内取引はアフリカにおけるゾウの密猟を招いている?

    政府は「日本国内で合法的な象牙・象牙製品の取引が認められていることが、海外でのゾウの密猟や象牙の密輸を助長しているとの事実はない。」としていますが、個人取引に見せかけた隠れビジネスの抜け穴などのあり、ずさんな規制の運用が目立ちます。密猟に悩むアフリカ諸国や環境保護団体は「全ての国内市場の閉鎖が必要」と主張しています。

  • 象牙・象牙製品の国際取引は規制されている?

    象牙取引は1989年のワシントン条約締結国会議で、全面禁止が決定されています。

    しかし中国政府の統計によると、中国内では昨年1年間で摘発された象牙密輸は900件以上に及んでいます。

  • 国内で象牙・象牙製品を取引することは合法?

    あらかじめ登録を受けた全形を保持した象牙の取引や、事業登録された事業者による分割された象牙・象牙製品の販売は違法ではありません。

    さらに、事業者でない個人による分割された象牙・象牙製品の販売はまったく自由です。

    事業者、個人問わず未登録の全形を保持した象牙を売買すること、事業者が無登録営業を行うことは「種の保存法」違反による罰則の対象となります。

  • インターネット上で象牙・象牙製品を取引しても問題はないですか?

    インターネットを介したC to C(個人間商取引)市場では、近年、象牙を取引する事例が多く確認されています。

    また、事業者が個人を装うなどして実態を明かさずに取引をおこなう「隠れビジネス」が、無視できない割合で存在しています。

    象牙市場の閉鎖を求める国際的な動向に配慮し、日本のeコマース企業としては、2017年7月1日に「楽天株式会社」が同社の運営するオンラインモール「楽天市場」とフリマサイト「ラクマ」で象牙製品の取り扱いを全面禁止する自主的措置を導入し、2017年11月9日には「株式会社メルカリ」が象牙製品の取引を全面禁止しました。

  • そもそも、象牙は何のために取引されているのですか?

    象牙はハンコ、置物、箸、ネックレスなどのアクセサリーなどに加工され、“富の象徴”として使用されています。

    中国では、高額で取引される象牙の販売ルートは、麻薬シンジケートや暴力団がコントロールしています。

    アフリカ諸国ではテロリストや反政府組織が象牙による外貨獲得とそれによる武器購入を広く行っており、象牙は紛争地帯の資金源と化しています。

  • ゾウを守るために個人でできることはある?

    象牙問題に対する、認知拡大にご協力ください。

    一人一人が問題を知り、
    声をあげることが
    ゾウを救う一歩になります。

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    HSI日本語ページ

ヒューメイン・ソサイエティー・ インターナショナルについて

HSIは1992年に創立され、パートナーの団体とともに世界最大級の動物愛護団体として活動しています。HSIは科学、アドボカシー、教育、実地プログラムを通じて、全ての動物を保護するため、25年以上活動しています。HSIは動物のケアをはじめ、動物への残虐な行為を防止し、苦しみを終わらせ、動物の命を救う法律や企業方針の変更を主導しています。長年にわたって築いてきた国際組織の上層部との関係や政府、企業などを通じて世界中の動物に関連する法律や規制、政策方針、決議案などの立案をサポートしています。

ワシントンDCに本部があり、世界50か国以上、ほぼ全大陸においてグローバルプログラムを実施しています。
HSIのビジョンは人々が自国の動物のニーズを心身ともに満たすこと・野生動物とその環境を保護すること・動物や動物を取り巻く環境を搾取したり、危害を加えることをやめ、尊重と思いやりをもって共生する世界ができることです。

Call to Action

中国は2017年12月末に国内の象牙市場を閉鎖し、残る合法的な象牙市場として日本が世界最大となりました。これまでに日本から中国へ違法に密輸された象牙は膨大な量で、今後も継続的に日本から不正に象牙が流れ込めば、日本は密猟や違法な取引を撲滅しようと努めている国際社会の流れの妨げとなるおそれがあります。日本にはほかのどの国よりも多くの象牙製造業者、象牙卸売業者、象牙小売業者が登録されており、こうした象牙の国内市場はゾウの密猟を促進し、象牙の需要を刺激します。日本は一刻も早く全面的に象牙の取引を停止し、売買を禁止しなければなりません。

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